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歯周病治療の流れ
歯周病学会ガイドライン2015より引用
歯周病の原因は口の中の細菌のかたまり(プラーク:歯垢)です。
日本人の40歳以上の約8割が歯周病であるといわれています。自覚症状がある虫歯と違い歯周病は気付かない間に歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かしてしまう病気です。
お口の中にはおよそ300~500種類の細菌が住んでいます。歯垢(プラーク)1㎎の中には10億個の細菌が住みついているといわれ、虫歯や歯周病を引き起こします。
歯垢(プラーク)を取り除かなければ、唾液中に含まれるカルシウムにより石灰化し硬くなり「歯石」と言われる物質に変化し歯の表面に頑固に付着します。プラークはブラッシングで除去できますが、歯石はブラッシングで取り除くことはできません。この歯石の周りに細菌が付着し、歯周病を進行させる毒素を出し続けます。
歯科医院で専用の器具を使い除去する必要があります。
<スケーリング=歯茎より上の歯面に付着した歯石(縁上歯石)>
<SRP(スケーリング・ルートプレーニング)=歯茎より下に付着した歯石(縁下歯石)>
歯茎より下(通常見えません)の歯面や根面に付着した歯石プラークなどを手用または超音波を利用したスケーラーなどを用い除去していきます。
除去するとともに、歯周病菌に汚染された歯質を除去して硬く滑らかな根面にします。繊細な根気のいる作業です。
SRP後の知覚過敏について
汚染された歯質が除去され、象牙細管(歯髄につながる微細な管)が露出することで起こります。通常は1週間がピークで象牙細管が石灰化して2~3週間で消失します。
麻酔の使用について
深い歯周ポケット底のSRPは多少の痛みを伴いますので、状況に応じて麻酔をしてから処置を行う場合もあります。
歯石は一度とっても、しばらくすると再形成されるため、定期的に歯科医院でとってもらう必要があります。
また、患者さん自身に自分自身の口の中の管理をするという心構えが大切です。
歯周外科手術について
残念ながら歯周基本治療(プラークコントロール、スケーリング、SRP)で改善されなった部位に対して行います。歯周外科手術は、切除療法(不良な歯肉や深い歯周ポケットの切除)、再生療法(GTRやエムドゲインによる歯周組織の再生)。歯の分割治療などを行うことで炎症部をとり除き、歯周組織の治療に向けての改善が目標です。
その後、噛み合わせの再構築などを経て終了、メインテナンスへの移行となります。
メインテナンスについて
歯周病は患者様のこれまでの生活習慣を経て進行しているため、治療には多少時間がかかるうえに、患者さん自身のプラークコントロールが治療の結果を左右します。
歯周治療が終了しても、治療後のプラークコントロールが悪ければ再発します。患者さん自身のホームケアと、歯科医院での定期的なケアで予防と管理が必要です。
メインテナンスの期間
平均的には3ヶ月ごとに行うことが望ましいとされていますが、この間隔は状況に応じて変更が必要となります。深いポケットが残存する場合や磨きにくい部位があるとか、歯ぎしりがあったり噛む力が強い場合とか、唾液検査により歯周病リスクが高いと判定された場合などは1~2ヶ月の間隔が望ましいでしょう。
軽度な歯周病であればすぐに治ります。中等度から重度の歯周病治療では1年以上かかることも珍しくはありません。
残った歯を残すためには、歯周病以外に噛み合わせ、歯並びに対してもコントロールや治療が必要になる場合もあります。
また、近年ストレスや喫煙、食生活などの生活習慣とも密接に関わりあっていることがわかってきました。
歯周病とはこう戦え!(炎症・力のコントロール、歯周病と全身疾患の関わり)
炎症のコントロール
歯周病の発症は、歯周病菌の感染によって起こります。
歯周病菌は鎧を着ているため(プラーク=バイオフィルム)、住みか(歯石,歯周ポケット)にいるため抗生物質が効きません。ハミガキや歯石除去などの機械的な除去が大切です。でも磨きにくい部分で隠れて増殖します。
歯周ポケットの中や不適合な冠、歯と歯の間(歯列不正)やブリッジの下が大好きです。磨きやすい環境を整えることが長い目で見て重要です。また歯周病菌の援軍である歯をゆする力、食片の圧入、タバコ、糖尿病は断ち切らねばなりません。すごい速度で歯周病を悪化させますから。戦いの後は、メインテナンスが歯周病菌の反撃の芽を摘みます。
力のコントロール
特定の歯に強い力がかからないように、噛み合わせの調整、ハギシリ・くいしばりから歯を守る装置(ナイトガード)を入れる。
歯周病と全身疾患の関わり
ごく普通の歯周病の存在が全身疾患のリスクとなります。
5mm以上の歯周ポケットの歯が20本以上あれば、手のひらサイズの潰瘍があるのと同じで、その潰瘍の上に多数の細菌が乗っているのです。
歯周病が心内膜炎、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、低体重児出産、早産、糖尿病患者の血糖値のコントロールの不全などと関連があること、歯周病の炎症の持続が全身疾患発症のリスクとなるということも近年わかってきています。
引用2016:歯周病と全身の健康 日本歯周病学会